【フーリエ変換とは?第二編】複素形式のフーリエ級数とは何?その導出方法についてご紹介

【フーリエ変換とは?第二編】複素形式のフーリエ級数とは何?その導出方法についてご紹介
【記事内容】フーリエ変換について、その導出方法から工業分野への応用例などについてご紹介

こんにちは。筆者のマニカです。

 

今回は『フーリエ変換』について(全三編に渡ってご紹介しますが、今回はその第二編)。

理工系の大学生から技術系の職種に就かれている社会人の方であれば必ずや聞いた事があるワードかと思います。

 

画像解析や音声解析、X線や紫外線・赤外線などの光を用いた固体物性に関する解析など、工業的に様々な分野で使われている『フーリエ変換』は非常に重要な数学のテクニックだと思いますが、いざそれを説明しろと言われるとしっかり説明できる人は多くはないのでは?と思います。

 

筆者もその一人ですが、言葉の概念だけを知っていて分かったつもりになっていますが、その詳細については理解していない所が多い為、今回は筆者の備忘録がてらフーリエ変換についてまとめていきたいと思います。

※以降で記述する内容で間違いなどがあるかもしれませんので、その際はコメント欄にてビシバシご意見頂けましたら幸いです。

 



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フーリエ変換について

フーリエ変換をいきなりご紹介したい所ですが、いきなり紹介するのは難しいので、以下の3編(3ステップ)に分けてご紹介していきたいと思います。

 

■第1編:フーリエ級数について(実数のみ)

■第2編:虚数を用いた複素形式のフーリエ級数について

■第3編:フーリエ変換とは

 

前回、第一編のフーリエ級数について(実数のみ)ご紹介しましたが、今回は、第二編の『虚数を用いた複素形式のフーリエ級数について』をご紹介していきたいと思います。

 

ちなみに、第一編に関してはこちらを下記の記事をご参照下さい。

複素形式のフーリエ級数について

まずは実数形式のフーリエ級数ですが、以下の式で表現されます。

$$ f(x) = \frac{a_0}{2}+\sum_{n=1}^{\infty}(a_n \cos nx + b_n \sin nx) \tag{1}$$

$$ a_n = \frac{1}{\pi} \int_{-\pi}^\pi f(x)\cos nx dx \tag{2}$$

$$ b_n = \frac{1}{\pi} \int_{-\pi}^\pi f(x)\sin nx dx \tag{3}$$

 

(1)式を複素形式で表現する為に必要になってくるのが以下の3つの公式(テクニック)になります。

①オイラーの公式
②テイラー展開
③マクローリン展開

 

まずは、①オイラーの公式について。

 

オイラーの公式は以下の式で示されます。

$$ \mathrm{e}^{ix} = \cos x + i sin x \tag{4}$$

なぜネイピア数\( e \)の指数関数が三角関数の\( \cos x \)と\( i \sin x \)の足し合わせで表現できるか?についてですが、

このオイラーの公式を導く為に必要なのが、②テイラー展開③マクローリン展開になります。

 

まずは、②テイラー展開から説明していきましょう。

テイラー展開は以下の(5)式で表現されますが、式から分かるように\( f(x) \)の関数を1~n次の多項式で近似するテクニックになります。

$$
\begin{eqnarray}
f(x) &=& \sum_{n=0}^{\infty}\frac{f^{(n)}(a)}{n!}(x-a)^n \\ \\
&=& f(a)+\frac{f'(a)}{1!}(x-a)+\frac{f”(a)}{2!}(x-a)^{2}+ \cdots +\frac{f^{(n)}(a)}{n!}(x-a)^{n} \tag{5}
\end{eqnarray}
$$

(5)式は\( f(x) \)のx座標のある地点aを中心としたテイラー展開になります。

 

ここで、\( f(x) \)について原点0を中心にテイラー展開する事を『マクローリン展開』といい、(6)式で表現されます。

$$
\begin{eqnarray}
f(x) &=& \sum_{n=0}^{\infty}\frac{f^{(n)}(0)}{n!}(x)^n \\ \\
&=& f(0)+\frac{f'(0)}{1!}x+\frac{f”(0)}{2!}x^{2}+ \cdots +\frac{f^{(n)}(0)}{n!}x^{n} \tag{6}
\end{eqnarray}
$$

このマクローリン展開が今回の複素形式のフーリエ級数を導き出す為の重要なテクニックになります。

 

マクローリン展開を使ってオイラーの公式の左辺の\( e^{ix} \)と右辺にある\( \cos x \)、\( \sin x \)を近似すると以下のようになります。

$$ e^{ix} = 1+\frac{ix}{1!}+\frac{(ix)^2}{2!}+\frac{(ix)^3}{3!}+ \cdots \tag{7}$$

$$ \cos x = 1-\frac{x^2}{2!}+\frac{x^4}{4!}+ \cdots \tag{8}$$

$$ \sin x = x-\frac{x^3}{3!}+\frac{x^5}{5!}+ \cdots \tag{9}$$

 

となります。ん? (7)式=(8)式+(9)式で表現できそうな雰囲気がしてきましたね!

 

その通りで、下記のように(7)式を\( i \)のない項(実部)\( i \)のある項(虚部)に分けると、以下のように\( \cos x \)と\( \sin x \)のマクローリン展開の(8)式、(9)式で表現できます。

$$
\begin{eqnarray}
e^{ix} &=& 1+\frac{ix}{1!}+\frac{(ix)^2}{2!}+\frac{(ix)^3}{2!}+ \cdots \\ \\
&=& 1+\frac{ix}{1!}-\frac{x^2}{2!}-\frac{(ix)^3}{3!}+ \cdots \\ \\
&=& (1-\frac{x^2}{2!}+\frac{x^4}{4!}-\cdots)+i(x-\frac{x^3}{3!}+\frac{x^5}{5!}-\cdots)\\ \\
&=& \cos x + i \sin x
\end{eqnarray}
$$

オイラーの公式を用いれば、ネイピア数eの指数関数が三角関数の\( \cos x \)と\( i \sin x \)の足し合わせで表現できる事がわかりました。

このテクニックを使ってフーリエ級数の実数形式を\( \cos x \)と\( i \sin x \)の足し合わせである複素形式に変換していきましょう!

 

フーリエ級数の実数形式は冒頭に説明したように、

$$ f(x) = \frac{a_0}{2}+\sum_{n=1}^{\infty}(a_n \cos nx + b_n \sin nx) \tag{1}$$

$$ a_n = \frac{1}{\pi} \int_{-\pi}^\pi f(x)\cos nx dx \tag{2}$$

$$ b_n = \frac{1}{\pi} \int_{-\pi}^\pi f(x)\sin nx dx \tag{3}$$

です。

ここで、\( e^{-inx} \)を\( \cos x \)と\( i \sin x \)で表現すると以下の(10)式になります。

$$
\begin{eqnarray}
e^{-inx} &=& \cos (-nx) + i \sin (-nx) \\ \\
&=& \cos nx – i \sin nx \tag{10}
\end{eqnarray}
$$

 

そこから\( \cos nx \)と\( i \sin nx \)を\( e^{inx} \)と\( e^{-inx} \)の足し合わせで表現してみましょう。

$$ \cos nx = \frac{e^{inx}+e^{-inx}}{2} \tag{11}$$
$$ \sin nx = \frac{e^{inx}-e^{-inx}}{2i} \tag{12}$$

 

(11)式と(12)式を用いて実数形式のフーリエ級数を複素形式で表現すると以下のようになります。

$$
\begin{eqnarray}
f(x) &=& \frac{a_0}{2}+\sum_{n=1}^{\infty}(a_n\cos nx + b_n \sin nx) \\ \\
&=& \frac{a_0}{2}+\sum_{n=1}^{\infty}(a_n \frac{e^{inx}+e^{-inx}}{2} + b_n \frac{e^{inx}-e^{-inx}}{2i}) \\ \\
&=& \frac{a_0}{2}+\sum_{n=1}^{\infty}(\frac{a_n-ib_n}{2}e^{inx}+\frac{a_n + ib_n}{2}e^{-inx}) \tag{13}
\end{eqnarray}
$$

これで\( \cos nx \)と\( i \sin nx \)を\( e^{inx} \)と\( e^{-inx} \)で表現できました。

とはいっても、(13)式はなかなかクドイのでさらに簡略化できないか?\( e^{inx} \)又は\( e^{-inx} \)のどちらか一方で表現できないか?について考えていきましょう。

 

という事で、\( e^{-inx} \)は\( – x \)という負の要素を持つので、これまで\( x \)を正の整数に限定していましたが、負の整数にも拡張して考えてみます。

 

負の場合は、\( \cos nx \)と\( i \sin nx \)については偶関数と奇関数の考えを導入します。

$$ \cos nx = \cos (-nx)$$
$$ \sin nx = -\sin (-nx)$$

 

上記2つをフーリエ級数の(2)式、(3)式に代入してみると、

$$
\begin{eqnarray}
a_n &=& \frac{1}{\pi} \int_{-\pi}^\pi f(x)\cos nx dx \\ \\
&=& \frac{1}{\pi} \int_{-\pi}^\pi f(x)\cos (-nx) dx \\ \\
&=& a_{-n} \tag{2}
\end{eqnarray}
$$

 

$$
\begin{eqnarray}
b_n &=& \frac{1}{\pi} \int_{-\pi}^\pi f(x)\sin nx dx \\ \\
&=& -\frac{1}{\pi} \int_{-\pi}^\pi f(x)\sin (-nx) dx \\ \\
&=& -b_{-n}
\tag{3}
\end{eqnarray}
$$

上記の(2)式と(3)式を用いて\(-\infty \)~\(+\infty \)までを\( e^{inx} \)で表現すると下記のようになります。

$$ f(x) = \sum_{n=-{\infty}}^{\infty}(\frac{a_n – i b_n}{2} e^{inx}) \tag{1}$$

と変換でき、かつ

$$ c_n=\frac{(a_n – i b_n)}{2} \tag{14}$$

とおくと、

$$ f(x) = \sum_{n=-{\infty}}^{\infty}(c_n e^{inx}) \tag{1} $$

となります。

 

ここで(14)式中の\(a_n\)と\(b_n\)をそれぞれ、(2)式と(3)式で表現すると、
$$
\begin{eqnarray}
c_n &=& \frac{(a_n – i b_n)}{2} \\ \\
&=& \frac{1}{2\pi}{\int_{-\pi}^\pi f(x) e^{-inx} dx} \tag{15}
\end{eqnarray}
$$
となります。

 

以上の事をまとめるとフーリエ級数を複素形式で表現すると、

$$f(x) = \sum_{n=-{\infty}}^{\infty}(c_n e^{inx})$$
$$c_n = \frac{1}{2\pi}{\int_{-\pi}^\pi f(x) e^{-inx} dx}$$

となります。

 

まとめ

という訳で、今回は『虚数を用いた複素形式のフーリエ級数について』をご紹介させて頂きました。

やっとこさフーリエ変換に必要なフーリエ級数(実数&複素形式)について導き出す所まできました。

 

登山でいうと8合目まではきた感じです。フーリエ変換まであと少し!

 

という訳で、次回はこれまでにまとめたフーリエ級数の知識を使ってフーリエ変換についてまとめていきたいと思います。

 

今日はここまで。それでは~。

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