【今さら聞けない!】FTAとは何?ってお話|系統図やFMEAと比較

【今さら聞けない!】FTAとは何?ってお話|系統図やFMEAと比較
【記事内容】FTA (故障の木解析)に関して図を使って解説していきます。また、系統図FMEAとの違いについてご紹介します。

こんにちは。筆者のma2ka(マニカ)です。

 

今回は『FTA (Fault Tree Analysis:故障の木解析)』とは何?って事で、主にメーカーの製造現場で何か不具合が発生した時の原因解析に使えるツールのFTAについて解説し、併せて『系統図』や『FMEA』との違いについてご紹介したいと思います。

 

※ちなみに本記事でご紹介するFTAは自由貿易協定(Free Trade Agreement:FTA)ではありませんのでご了承下さい。



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はじめに

FTAとは?

繰り返しになりますが、FTAとはFault Tree Analysisの頭文字をとったもので、日本語では故障の木解析と呼ばれます。

一言でいうと、何か問題が発生した場合、その問題を引き起こす要因を抜け漏れないように(系統的に)洗い出して、最終的にその洗い出した要因の中から問題が発生した真の原因を探し出す解析手法になります。

FTAと系統図の関係

FTA系統図の考え方・解析手法は紙一重です。FTAが系統図と違うのは以下の点になります。

系統図:問題の発生要因を抜け漏れなく洗い出す。
FTA:系統図の考え方に加えて、各発生要因の発生確率も記述して、定量的に問題が発生する確率まで導き出す事が出来る。

ちなみに系統図はFTAとは違って問題の解析だけでなく、ある事象について整理する場合にも使えます。つまり系統図は大きくわけると①事象整理型、と②問題解決型の2種類あります。

 

上述のようにFTAと系統図は基本的なスタイルは似ており、FTAを解説する上で、まずは系統図についての説明が必要なので簡単に説明したいと思います。系統図は知ってるよ!って方は本節を読み飛ばして頂いて次節からお読み下さい。

 

系統図は①事象整理型②問題解決型の2種類あるとご説明しました。

 

①事象整理型は、多くの人が考え事をする時に頭の中で無意識に実践しています。

 

例えば、『今日食べたモノ』を挙げて下さいと言われた場合、まず頭の中で朝、昼、晩に分けてから、それぞれの時間で何のご飯を食べたか考えると思います。

また、主食以外で間食に食べたお菓子や夜食に何を食べたかを考えると思います。

 

つまり、いきなり食べ物を思い出すのではなく、何かしらの項目(時間や場所など)に分けて考えると思います。これを系統図にまとめたモノが下の表1です。

表1. 事象整理型の系統図

上記のように『今日食べたモノ』という事象に対して、まずは分類1で『主食』と『主食以外』に大きくわけました。分類2時間軸に焦点をあてて、『朝』、『昼』、『晩』又は『午前』、『午後』に分類しました。

最後に分類2で分けた時間ごとに実際に食べた『食べ物』を分類3に列挙しています。

 

このようにトップ事象の『今日食べたモノ』に対していきなり食べ物を挙げるのではなく、大項目→小項目へと項目ごとに整理して最終的に結果をまとめる事で、『抜け漏れ』を防止する事ができます。

 

抜け漏れ防止のキーポイントは『項目を全て足したら100%になる事』です。

例えば、分類1であれば、食べたモノは『主食』と『主食以外』の2種類に分別しましたが、この2種類で食べたモノは100%網羅できるている事になります。

 

また、分類2であれば、朝・昼・晩や午前・午後(am・pm)と分別しましたが、これらで1日(24時間)を100%網羅できている事になります。

このように各項目で分類分けする際に『足して100%になる事』を意識すると抜け漏れ防止に効果的です。

 

 

例で挙げた『今日食べたモノ』であれば、わざわざ系統図にする必要はないかもしれませんが、トップ事象がもっと複雑な場合、時間軸場所軸などの項目ごとに分けて整理する『系統図』は非常に有効なツールとなります。

 

続いて、②問題解決型について説明します。

問題解決型はその名の通り、トップ事象に何かしらの不具合(問題)がきます。

今回は私が現在子どもと一緒になってはまっているミニ四駆を例にとって、『ミニ四駆が動かない』という問題をトップ事象にして系統図を作成してみました。

表2. 問題解決型の系統図

ミニ四駆が動かない』という問題に対して、まず分類1で『電気系』と『機械系』の2つのトラブルに分けました。続いて分類2でそれぞれの系統のトラブルについて部品ごとに分けました。

最後に分類3で、各部品ごとにミニ四駆が動かなくなるであろう問題(故障モード)を挙げてみました。

 

上記の系統図をFTAで表現するとどうなるか? 実際にFTAにしたのが下の図1になります。

(※スペースの関係上、系統図では左から右に分類分けしましたが、FTAは上から下に分類分けしています。特に深い意味はありません。自分が分かりやすい方法で分類すればOKです。また、分類1の電気系のトラブルのみ記載し、機械系のトラブルは省力しています。ご容赦下さい。)


図1.『ミニ四駆が動かない』という事象に対するFTA

ん? いきなり変な記号やら図形が表れたけど何?って思われたかもしれませんが、これがFTAと系統図の違いになります。それでは記号や図形の意味について次節で説明していきたいと思います。

 

FTAを用いた解析手法

図1に記載されている記号の意味をまとめたものが下の表になります。

表3.論理記号とその意味について

名称 記号 意味
ORゲート 要因のうち少なくとも1つ発生すると不具合(問題)が起きることを示しています。
ANDゲート すべての要因が発生した時に不具合(問題)が起きることを示しています。

図1を使ってORゲートANDゲートを説明すると、

ORゲートは複数ある要因のうち一つでも発生すると不具合が起こることを示しています。

 

①電池の故障に関して、要因を2つ挙げていますが④電極(±)の入れ間違い⑤バッテリー切れの両方ともどちらか一方でも発生すればミニ四駆が動かなくなります。

ですので、発生確率も①電池の故障 = ④電極(±)の入れ間違い + ⑤バッテリー切れとなっています。

 

一方でANDゲートは複数ある要因がすべて発生した時に不具合が起きる事を示しています。逆にいうと複数ある要因のうち一つだけ起こっても不具合が起こりません。

 

③回路の故障に関して、要因を2つ挙げていますが⑧電極配線の組み間違い⑨電池の電極(±)の入れ間違いがあります。⑧電極の配線の組み間違いだけ発生しても、モーターが逆回転するので正常に動くかは別としてミニ四駆は動くはずです。

これに、⑨電池の電極(±)の入れ間違いが発生する事で、ミニ四駆が動かなくなります。

 

というわけで、発生確率は両方の要因の掛け合わせになるので、

発生確率 ③回路の故障 = ⑧電極配線の組み間違い × ⑨電池の電極(±)の入れ間違いとなっています。

 

続いて、各要因の記号の説明を下記します。

表4.事象記号とその意味について

名称 記号 意味
事象 事象のさらなる深堀りが必要。
基本事象 これ以上深堀りできない事象。
否展開事象 更に深堀りできる事象である、情報不足・解析不足で
現時点ではこれ以上深堀りできない事象。
通常事象 故障などの不具合ではなく、
通常起こる可能性のある事象。

 

FMEAとは?FTAとの違いについて

FMEAとは Failure Mode And Effect Analysis (故障モード影響解析)の頭文字をとったものです。

簡単にいうと、FTAがトップダウン(上位から下位)で解析するの対して、FMEAは全く逆で、ボトムアップ(下位から上位)で解析します。

 

FTAはトップ事象(問題)から、その問題が発生する要因を細分化していき真の原因を突き止める解析手法です。併せて、発生確率も予測する事で、トップ事象の問題が発生する確率や逆に各要因の発生確率を知る事で、その要因がトップ事象に与える影響を調査する事ができます。

 

FMEAはある要因が製品やシステム全体にどういう影響を与えるかをボトムアップ的に考える解析手法です。

例えば、さきほどの『ミニ四駆が動かない』というFTAの要因の中で、『⑦導線の断線』がありました。この『導線の断線』が発生するとどういう不具合が発生するかを考える事がFMEAです。

『導線の断線』が発生すると、『モーターが正常に起動しない』=『ミニ四駆が動かない』や『導線の発熱による火災』などなど、いろいろと予想できると思います。

 

今回はFTAがメインですので、FMEAについての詳細な説明は割愛します。FMEAはどちらかというと将来発生する故障を予測して未然に防ぐ事に利用できる解析手法かと思います。

余談ですが、FMEAはアメリカ陸軍に始まり、航空宇宙(アポロ計画)、トヨタ自動車など多種多様の分野で使われています。

まとめ

という事で今回は『FTA (Fault Tree Analysis:故障の木解析)』とは何?って事で、主にメーカーの製造現場で何か不具合が発生した時の原因解析に使えるツールのFTAについて解説し、併せて『系統図』『FMEA』との違いについてご紹介させて頂きました。

 

個人的には時間がないって時ほど、是非使うべき解析手法だと思っています。

一度使えば、フォーマットを再利用すれば2回目からは時間短縮もできるはずです。

 

今日はここまで。それでは~。

 

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