こんにちは。筆者のma2ka(マニカ)です。
今回は材料の分析方法に関して、目的別に分けてどういう手法(装置・機器)を使ったら良いかをご紹介します。
分析の方法(学問的には分析化学)を紹介する書籍などはたくさんあるし、ネット上にもいろいろな情報があふれています。
本記事では、書籍などに書かれている小難しい事はおいといて、『色々な分析方法について一言でいうと何がわかるの?』って事で数式を使わずに簡単にご紹介したいと思います。
参考までにそれぞれの分析手法の原理についても簡単に触れていきたいと思いますね♪
それではさっそく目的別に各種分析方法についてご紹介していきましょう!
第一弾の今回は、単純に材料に含まれている元素を調べる分析方法をご紹介。
材料に含まれている元素を知りたい
(1) 蛍光X線分析 (XRF)
蛍光X線分析、通称XRF (X–Ray Fluorescence analysis)は材料に含まれている元素を調べる事ができます。
単純にどんな元素が含まれているか?(定性分析)だけでなく、どのくらいの量が含まれているか?(定量分析)も調べる事ができます。
ちなみにμmレベルのミクロな構造を観察する際に使われる装置・走査型電子顕微鏡 (通称SEM:Scanning Electron Microscope)に付属されている事があるEDXもXRFの一種です。
もう少し詳しい話をするとXRFにはEDX (エネルギー分散型:Energy Dispersive X-ray Spectrometry)とWDS (波長分散型:Wavelength Dispersive X-ray Spectrometry)の2種類のタイプがあります。
蛍光X線の検出方法の違いでタイプが分かれるのですが、この辺は話すと長くなるので割愛します。
■XRFのメリット
・分析する為の前段階のサンプル作りが比較的簡単。
・分析時間が比較的短い。
・SEMに付属のXRFであれば、画面上で試料を確認しながら分析したい部分の元素分析がピンポイントで出来る。
・ハンディタイプの装置を利用すれば、その場での分析も可能(分析室に試料を持ち込む必要がない)
■XRFのデメリット
・微量元素の解析には向いていない(検出限界が高いので数ppm~ppbオーダーの分析は厳しい)。
■XRFの測定原理
名前の通りですが、X線を物質に照射した際に物質から発生する蛍光X線を調べる事でどういう元素がふくまれているかを調査します(元素の同定)。また、蛍光X線の強度から元素の定量分析をする事ができます。
ちなみに蛍光とは、X線を物質に照射するとAという安定した状態からBという活性化した不安定状態(励起状態)になります。この不安定な状態BからAに戻る際に外部に発生される光(ここではX線)が蛍光です。
例え話でいうと、フリーザに挑発されてスーパーサイヤ人に覚醒する悟空を例にあげましょう(古いネタですいませんw)。
・普通の悟空 = 通常状態の物質Z (安定状態A)
・スーパーサイヤ人になった悟空 = 不安定状態の物質Z (励起状態B)
・フリーザが悟空に放った一言 (今度は木っ端微塵にしてやる、あの地球人のように!) = 物質Zに照射するX線
・悟空が放った一言 (クリリンのことかーっ!) = 物質Zから放出される蛍光X線
元素も悟空と同じように外部から何かしらの挑発(今回はX線照射)があると、一時的に不安定状態になり、時間が経つとまた元に戻ります。
この悟空の放った『クリリンのことかーっ!』の声量や声質は元素ごとに違うので、それを調査して元素分析できる仕組みです。
※厳密にいうと、蛍光は不安定状態から安定状態に戻った時に放出されるので上の例え話は時間軸的に少し間違ってますが、ご了承下さい。
(2) ICP-MS
ICP-MSはInductively Coupled Plasma – Mass Spectrometryの略で、日本語だと誘導結合プラズマ質量分析といいます。
名前だけ見ても何のこっちゃっ?て感じですが、この分析方法は分析したい材料を溶かして液体にし、超高温(約10000K)のプラズマ(アルゴンガスなど常温で気体の元素を更に温度を上げて活性にした状態)を照射して、各元素固有の信号を検出して元素の訂正・定量分析をします。
■ICP-MSのメリット
・材料中に含まれる超微量元素を調べる事ができる(検出限界はppb~pptオーダーまで検出可能)。
■ICP-MSノデメリット
・分析する為の前段階のサンプル作りが大変(酸やアルカリで溶かして液体にする必要がある)。
・液体にできない材料は分析不可。
・その場分析は不可(分析室に試料を持ち込む必要がある)。
■ICP-MSの測定原理
XRFの『クリリンのことか理論(勝手に命名w)』と考え方は同じです。
分析したい元素に外部からエネルギーを与えて、不安定状態にし、不安定状態から通常の安定状態に戻る時に発生する各元素固有のエネルギーとその強度を調べる事で定性・定量分析が出来ます。
ICP-MSの場合は『X線照射』ではなく、『プラズマ照射』して対象物質がイオン化して活性になった状態(励起状態)から通常状態に戻る際のエネルギーを検出しています。
ちなみにさっきからプラズマ、プラズマと連呼してますが、プラズマとは気体の状態にエネルギーを加えると、分子、原子の状態からイオンの状態に変化しますが、この状態をいいます。
物質の三態(固体、液体、気体)とよくいいますが、一番エネルギーが高い状態の気体の更に上の状態(相)が『プラズマ』です。
(3) イオンクロマトグラフィー
イオンの状態の物質がカラムと呼ばれる空間を通る際に壁面に吸着するのですが、その吸着速度と吸着強度を測定する事で元素の定性・定量分析が出来ます。
■イオンクロマトのメリット
・元素の同定だけでなく、イオン化する化合物(アンモニアなど)の同定ができる。
・同じ元素でもイオンの状態の違いがわかる(例えば、Fe2+とF3+)。
■イオンクロマトのデメリット
・液体の状態でないと測定不可
・陰イオン(ー)と陽イオン(+)の物質を同時には分析出来ない。
まとめ
という訳で、今回は単純に物資に含まれている元素を調べる分析方法を3つご紹介させて頂きました。
個人的にはもの凄い微量元素を調べる以外はXRFで事足りると思っていますが、それはお仕事の業界によって異なるんでしょうね。
てか、まだまだ面白い分析手法(化合物の構造解析でいくと、XRD、XAFS、FT-IRなど、電子状態であれば単結晶X線構造解析、ラマン、XPS、スピン状態であればNMRなどなど)がたくさんありますので、これから、それらの分析方法について、この記事にどんどん追加していきたいと思います。
もちろん、ざっくばらんなスタンスを保ちつつ。
分析機器は技術の進歩で機器のサイズは小さくなり、かつ、分析時間は短くなってどんどん使いやすさが増しています。
そのように便利になってお手軽に分析ができるようになった反面、装置の中身(測定原理や各種部品)がどんどんブラックボックス化していっているように感じます。
一技術者として、分析結果を考察する事はもちろん重要ですが、そもそも分析装置の中身や測定原理を抑えておくことは、データを正しく理解する上で非常に重要だと思います。
とはいうものの、とっつきにくい分析機器が多いので、本記事がそのとっかかりに少しでもなれば幸いです。
最後まで閲覧して頂きましてありがとうございました!
以上、今日はここまで。それでは~。
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