こんにちは。筆者のma2ka(マニカ)です。
今回は鉄が錆びるメカニズムをまとめてみました。記事を書いているうちに鉄骨ハウスメーカーの柱に使われている鉄の耐久性ってどんなもん?と気になったので、最後に各社の防錆技術について比較してみました。
記事の最初の方は化学反応式や結晶の話などなど、脱線もしているので鉄骨ハウスメーカーの比較結果のみ知りたい方は無視して読み飛ばしてください。
鉄が錆びるメカニズムについて
鉄が錆びるメカニズムですが、ご存じの通り、酸化です!
酸化とはいうものの、鉄の表面ではどういった反応が起こっているの?って事で、『錆』について、もう少し噛み砕いて科学的に説明してみます。
科学的にいうと、錆びる(腐食)って、電気化学反応になります。電気化学反応って何?って感じですが、電子をやりとりする反応でっせって事です。鉄が水分に触れて、イオン化できる状態になると下記のような鉄が水分中に溶け出す反応が起こります。
(1) Fe → Fe2+ + 2e–
上の状態では、鉄は鉄イオンに変化しているので、鉄が水に溶けて少しづつ減っていきますが、この時点ではまだ錆びていません。鉄がイオン化した事で電子が生成されたので、この電子をもらって水分中で下記のような反応が連続的に起こります。
(2) O2 + 2H2O + 4e– → 4OH–
(1)式で、鉄は電子を失う(相手にあげる)反応をしますが、これを酸化反応(アノード反応)といいます。反対に(2)式では酸素は電子をもらいますが、この電子をもらう反応を還元反応(カソード反応)といいます。
水分中に溶けだした鉄は下記のように酸素と水と反応して水酸化鉄に変化します((1)式と(2)式の足し合わせになります)。
(3) 2Fe + O2 + 2H2O → 2Fe2+ + 4OH– → Fe(OH)2
上記の水酸化第一鉄(Fe(OH)2)はさらに酸化されて、水酸化第二鉄であるFe(OH)3となります。このFe(OH)3が乾燥する事で、錆である酸化鉄・Fe2O3となります。
ちなみに、こいつは通称ヘマタイト(Hematite)というモノで、自然界にも存在する鉱物の一種です。
(1)、(2)式は電子をあげる、受け取る反応になる為、電気化学反応≒酸化還元反応で、これは電池と同じような反応が起こっています。ただの『錆』ですが、鉄の表面で起こっている反応を科学してみると、けっこう面白い!
話はちょっくら脱線しますが、ワタクシ、結晶・鉱物オタクなんですが、ヘマタイトの結晶の構造を『見える化』してみました。茶色の丸が鉄で、赤い丸が酸素の原子を表しています。
さらに余談になりますが、結晶の構造って世の中には理論上230種類(空間群と言われます)あって、どんな結晶も、この230種類に必ず当てはまるんです。
ダイヤモンドもルビーも雪の結晶もです(ただし、ガラスのような規則性がないモノ(非晶質物質)は除きます)。
遠い昔に結晶学を学びましたが、結晶学 =ミクロな建築だと思っています。この辺はいろいろ書きたい事があるので、また別の機会に『結晶学』のトピックとして記事にしたいと思います。
ついでにエメラルドの結晶構造を下記しちゃいます。めっちゃキレイで芸術!
鉄骨ハウスメーカーの防錆性について
かなり話が脱線しましたが、話を錆に戻して鉄骨ハウスメーカーの防錆性について調べてみました。今回調査したハウスメーカーは、大和ハウス、積水ハウス、セキスイハイム、ヘーベルハウス、トヨタホーム、パナホームの6社です。
先に結論をいうと、セキスイハイムだけが、独自路線をいってて、他のハウスメーカーは似たような構造になっています。
セキスイハイム以外は、基本的には3層構造になっていて、
①鉄骨の鉄の表面に亜鉛メッキでコーティング
②リン酸亜鉛の膜でコーティング
③電着塗装と呼ばれる樹脂でコーティング
となっています。
錆のメカニズムは鉄が水と酸素と触れる事で発生するので、上記のように鉄を①~③の3層でカバーして、水と酸素から守っています。
最後に、セキスイハイムですが、鉄表面に高耐食メッキ(亜鉛とアルミニウムとマグネシウムの合金)を施しています。
ホームページをみる限りだと、防錆処理はメッキ処理のみのように見えます(2層目のリン酸亜鉛処理、3層目の電着塗装処理はなし)。
金属メッキは錆の防止というよりも、反応を遅らせる=腐食自体は少しづつ進行してしまう、と思っているので、メッキだけだと心もとなくね?というのが個人的な意見です。
他メーカー同様に耐久性テストの結果を公開していれば比較できて分かりやすいのですが、、、。
まとめ
今回は『錆』についてのお話をまとめてみました。
ハウスメーカーの防錆技術は大きくわけて2通りありましたが、大手鉄骨ハウスメーカーの防錆技術はホームページを見る限りではすごい防錆力がありそう。
これに加えて耐震性や防火性や、さらには省エネ性など、日本の家に求められる要件ってめちゃくちゃ多そう、、、。
2020年の東京オリンピックにむけた建築ラッシュは収束している?かもしれませんが、今後も各社の技術力に期待したいです。
最後まで読んで頂きましてありがとうございました。
今日はここまで。それでは、また!
【参考文献】
1.K. Momma and F. Izumi, “VESTA 3 for three-dimensional visualization of crystal, volumetric and morphology data,” J. Appl. Crystallogr., 44, 1272-1276 (2011).
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