【フーリエ変換とは?第三編】フーリエ変換とその応用|工業分野での使用例

【フーリエ変換とは?第三編】フーリエ変換とその応用|工業分野での使用例
【記事内容】フーリエ変換について、その導出方法から工業分野への応用例などについてご紹介

 

こんにちは。筆者のマニカです。

 

今回は『フーリエ変換』について(全三編に渡ってご紹介している本シリーズですがいよいよ今回で最後の第三編)。

理工系の大学生から技術系の職種に就かれている社会人の方であれば必ずや聞いた事があるワード、それがフーリエ変換!

 

画像解析や音声解析、X線や紫外線・赤外線などの光を用いた固体物性に関する解析など、工業的に様々な分野で使われている『フーリエ変換』は非常に重要な数学のテクニックだと思います。

しかし、、、、いざそれを説明しろと言われるとしっかり説明できる人は多くはないのでは?と思います。

 

私もその一人ですが、言葉の概念だけを知っていて分かったつもりになっていますが、その詳細については理解していない所が多い為、今回は筆者の備忘録がてらフーリエ変換についてまとめていきたいと思います。

※以降で記述する内容で間違いなどがあるかもしれませんので、その際は本記事の最後にあるコメント欄にてビシバシご意見頂けましたら幸いです。

 



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フーリエ変換について

フーリエ変換をいきなりご紹介したい所ですが、いきなり紹介するのは難しいので、以下の3編(3ステップ)に分けてご紹介してきました。

 

■第1編:フーリエ級数について(実数のみ)

■第2編:虚数を用いた複素形式のフーリエ級数について

■第3編:フーリエ変換とは

 

前回の第2編では『虚数を用いた複素形式のフーリエ級数』についてご紹介しました。

今回は、第3編という事で『フーリエ変換とは何ぞや?』と『工業的にはどういう使われ方をしているの?』についてご紹介していきたいと思います。

 

ちなみに、第一編、第二編に関しては下記の記事をご参照下さい。

 

 

前回までのおさらい (フーリエ級数について)

まずは実数形式のフーリエ級数は以下の式で表現されます。導出方法は第一編をご参照下さい。
※スマホで閲覧の場合は画面スワイプでスクロールできます。

$$ f(x) = \frac{a_0}{2}+\sum_{n=1}^{\infty}(a_n \cos nx + b_n \sin nx) \tag{1}$$$$ a_n = \frac{1}{\pi} \int_{-\pi}^\pi f(x)\cos nx dx \tag{2}$$$$ b_n = \frac{1}{\pi} \int_{-\pi}^\pi f(x)\sin nx dx \tag{3}$$

 

続いて、複素形式のフーリエ級数は以下の式で表現されます。こちらの導出方法は第二編をご参照下さい。

$$ f(x) = \sum_{n=-{\infty}}^{\infty}c_n e^{inx} \tag{4}$$
$$ c_n = \frac{1}{2\pi}{\int_{-\pi}^\pi f(x) e^{-inx} dx} \tag{5}$$

 

これらの式を用いてフーリエ変換を説明していきたいと思いますが、その前に関数の周期(\( x  \)軸)の単位に関して一点補足があります。

これまでは角度(ラジアン)を前提でお話ししていましたが、より汎用性を持たせる為にどんな単位でも使えるように変換していきたいと思います。

 

その詳細について次章で説明していきます。

 

変数\( \ x \)の単位を変えて汎用性を持たせる

これまでご説明してきた変数\( x \)の単位は角度(ラジアン)を前提としていました。

ここでは、変数\( x \)がどんな単位でも対応できるようにフーリエ級数の式に少しばかり手を加えていきたいと思います。

 

\( x \)の単位をラジアンとして定義していたので、変数\( x \)の範囲は-180°≦\( x \)≦ 180°、つまり、\( -\pi  \)≦\( x \)≦\( \pi  \)としています(360°= \( 2\pi  \)を1周期としている)。

 

ここでこれまでの変数\( x \)を\( \theta \)と置き換え、新しくどんな単位でも使える変数を\( x \)と置き換えます。

また、新しい変数\( x \)の周期を2\( L \)と置くことにします。

 

つまり、

\( -\pi  \)≦\( x \)≦\( \pi  \) ⇒ \( -\pi  \)≦\( \theta \)≦\( \pi  \)

\( -\pi  \)≦\( \theta \)≦\( \pi  \) ⇒ \( -L \)≦\( x \)≦\( L \)

 

 

この置き換えに特に大きな意味はありません。今後も\( x \)軸の変数として\( x \)を使いたい為の作業です。

別に\( x \)や\( \theta \)にこだわらず、アルファベットであれば何でもOKです。

とりあえず、本記事では角度=\( \theta \)、新しい周期=\( L \)とします。

 

第一編の最初から\( x \)軸の変数を\( \theta \)にしとけよ!ってご意見はあるかと思いますが、、、、変数としてなじみのある\( x \)をとっかかりの最初は使いたかったので使用しています。ご容赦下さいませ。

 

 

それでは、新しい周期\( L \)と変数\( x \)について\( \theta \)を使って定義すると以下のようになります。

$$ x = \frac{L\theta}{\pi} \tag{6}$$

つまり、

$$ \theta = \frac{\pi x}{L} \tag{7}$$

となります。

 

(6)式は単純に\( \theta \)の周期\( \pi \)に対する新しい周期\( L \)の比率を求めて、それを\( \theta \)に掛けただけのものです。

難しく考える必要は全くなくて、\( L \)が\( \pi \)と全く同じ周期であれば、新しい変数\( x \)は\( \theta \)と全く同じだし、2倍又は半分であれば、その比率だけ\( \theta \)に掛けて倍率を合わせたものが新しい変数\( x \)ですよって話です。

 

あとは(7)式を(1)~(5)式に代入すればOKですが、改めて(1)~(5)式を\( \theta \)で表すと以下のようになります。

※スマホで閲覧の場合は画面スワイプでスクロールできます。

$$ f(\theta) = \frac{a_0}{2}+\sum_{n=1}^{\infty}(a_n \cos n \theta + b_n \sin n\theta) \tag{1}$$$$ a_n = \frac{1}{\pi} \int_{-\pi}^\pi f(\theta)\cos n\theta d\theta \tag{2}$$

$$ b_n = \frac{1}{\pi} \int_{-\pi}^\pi f(\theta)\sin n\theta d\theta \tag{3}$$

 

$$ f(\theta) = \sum_{n=-{\infty}}^{\infty}c_n e^{in\theta} \tag{4}$$
$$ c_n = \frac{1}{2\pi}{\int_{-\pi}^\pi f(\theta) e^{-in\theta} d\theta} \tag{5}$$

 

上記(1)~(5)の式に直接(7)式を代入しようと思いますが、(2)、(3)、(5)式に関しては積分の最後の\( d\theta \)が残ってしまいます。

そうならないように、ここで置換積分のテクニックを使いましょう。

 

(7)式の\( x \)を\( \theta \)で微分してあげると、

$$ \frac{dx}{d\theta} = \frac{L}{\pi} $$

よって、

$$ {d\theta} = \frac{\pi}{L} dx \tag{8}$$

 

(8)式を使って、(1)、(2)、(3)、(5)式の\( d\theta \)を置換すると、(1)~(5)式は以下のように変換されます。

※スマホで閲覧の場合は画面スワイプでスクロールできます。

$$ f(\theta) = \frac{a_0}{2}+\sum_{n=1}^{\infty}\left\{a_n \cos \left(\frac{n\pi x}{L}\right) + b_n \sin\left(\frac{n\pi x}{L}\right)\right\} \tag{1}$$$$ a_n = \frac{1}{L} \int_{-L}^L f(x)\cos (\frac{n\pi x}{L}) dx \tag{2}$$

$$ b_n = \frac{1}{L} \int_{-L}^L f(x)\sin (\frac{n\pi x}{L}) dx \tag{3}$$

 

$$ c_n = \frac{1}{2L}{\int_{-L}^L f(x) e^{-\frac{in\pi x}{L}} dx} \tag{5}$$

 

周期関数から非周期関数へ (周期\( L \)から\( \infty \)への拡張)

ここで周期\( L \)を\( \infty \)にして、周期を持たない(非周期)関数の近似を可能にする為の作業に入ります。

ここからは、簡略化する為に複素数も含む形式の(5)式のみ扱う事とします。

 

(5)式は級数ですが、周期\( L \)を\( \infty \)にする事で級数\( \Sigma \)から積分\( \int \)になると考えます。

式で表すと以下のようになります。

$$ \sum_{n={-\infty}}^{\infty} c_n = \int_{-\infty}^{\infty} c dn $$

 

よって、\( L \)→\( \infty \)の場合のフーリエ級数は、

$$
\begin{eqnarray}
f(x) &=& \sum_{n=1}^{\infty} c_n e^{\frac{in\pi x}{L}}\\ \\
&=& \int_{-\infty}^{\infty} c_n e^{\frac{in\pi x}{L}} dn
\end{eqnarray}
$$

ここで式をシンプルにする為に
$$ k = \frac{n\pi}{L} $$
とおきます。

これを(5)式に代入しますが、またまた置換積分のテクニックを使って、両辺を\( dn \)で微分すると、

$$ \frac{dk}{dn} = \frac{\pi}{L} $$
よって、
$${dn} = \frac{L}{\pi} dk \tag{9}$$

 

上記(9)式を(5)式に代入すると、
$$
\begin{eqnarray}
f(x) &=& \int_{-\infty}^{\infty} c_n e^{\frac{in\pi x}{L}}dn \\ \\
&=& \frac{L}{\pi} \int_{-\infty}^{\infty} c_n e^{ikx} \frac{L}{\pi} dk \tag{10}
\end{eqnarray}
$$

 

(7)式の\( c_n \)は以下のように示されるので、

$$c_n = \frac{1}{2L}\int_{-\infty}^{\infty} f(x) e^{-ikx} dx $$

 

上記の\( c_n \)を(7)式に代入して整理すると、

※スマホで閲覧の場合は画面スワイプでスクロールできます。

$$
\begin{eqnarray}
f(x) &=& \frac{L}{\pi} \int_{-\infty}^{\infty} c_n e^{ikx}dk\\ \\
&=& \frac{L}{\pi} \int_{-\infty}^{\infty}
\left(\frac{1}{2L}\int_{-\infty}^{\infty} f(x) e^{ikx}\right)dx\\ \\
&=& \frac{1}{2\pi}\int_{-\infty}^{\infty} \left(\int_{-\infty}^{\infty} f(x) e^{-ikx} dx \right)e^{ikx} dk\\ \\
&=& \frac{1}{\sqrt{2\pi}}\int_{-\infty}^{\infty} \left( \frac{1}{\sqrt{2\pi}}\int_{-\infty}^{\infty} f(x) e^{-ikx} dx\right) e^{ikx} dk \tag{11}
\end{eqnarray}
$$

となります。

ちなみに\( 2\pi \)をわざわざ\( \sqrt{2\pi}\)と2つに分けて表記しましたが、これは後述のフーリエ変換フーリエ逆変換のそれぞれの式の見た目を同じようにする為です。

ぶっちゃけ、\( 2\pi \)のままでもOKです。その場合はフーリエ変換とフーリエ逆変換の見た目が少し変わるだけの話です。

 



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いよいよフーリエ変換

さあ、やっとやっとフーリエ変換です。
前章の(11)式の

$$ \frac{1}{\sqrt{2\pi}}\int_{-\infty}^{\infty} f(x) e^{-ikx} dx = F(k) $$

 

とおくと、そうです!

これが\( f(x) \)を\( F(k) \)にフーリエ変換した式となります。\( f(x) \)を別の変数\( k \)で表現した式になります。

 

逆に\( f(x) \)を\( F(k) \)で表現した式が以下の式で、これをフーリエ逆変換といいます。
$$f(x) =  \frac{1}{\sqrt{2\pi}}\int_{-\infty}^{\infty} F(k) e^{ikx} dk $$

 

以上の事をまとめると、
※スマホで閲覧の場合は画面スワイプでスクロールできます。

$$ F(k)=\frac{1}{\sqrt{2\pi}}\int_{-\infty}^{\infty} f(x) e^{-ikx} dx  \tag{フーリエ変換}$$
$$f(x) =\frac{1}{\sqrt{2\pi}}\int_{-\infty}^{\infty} F(k) e^{ikx} dk   \tag{フーリエ逆変換}$$

 

フーリエ変換の工業分野への応用

ここでは、フーリエ変換が工業分野でどのように使用されているかを一つの例を出して説明します。

FT-IR (フーリエ変換赤外分光)

物質を形づくっている分子は、分子によって吸収又は透過する光の波長が違いますが、その違いを逆手にとって、吸収する波長から分子の状態を同定する分析手法がFT-IRです。

詳しくはググるといくらでも出てきますし、化学系の方なら聞いた事ある測定器のはず。

 

FT-IRは名前にもある通り、フーリエ変換を応用した機器になります。

連続光を照射した時のエネルギー強度\( I \)を横軸に、その時の時間\( t \)を縦軸にとったスペクトルをフーリエ変換して、横軸が波数(波長の逆数)のスペクトルに変換する事が出来ます。

 

波数ごとにどういう分子でどういう状態かについて、これまでの研究結果からデータ化されているので、それと照らし合わせて解析していくという感じです。

 

ちなみに日本分光(JASCO)の以下のページが非常に分かりやすいのです。
https://www.jasco.co.jp/jpn/technique/internet-seminar/ftir/ftir3.html

まとめ

という訳で、第3編でお送りしたフーリエ変換シリーズですが、やっと導き出すことができました。

いかがでしたでしょうか!?

 

スマホで数式が見れるからといって試験のカンペに使うのはNGよ・笑

今後の為にしっかりと頭に叩き込みましょう!

 

私自身がダメ学生だったので偉そうにいえませんが、技術系の道に進むのであればしっかり基礎を学んでおくと、後々めっちゃ楽になるし、知っていると知らないとでは、ある事象を観た時の解析の幅に大きな差が出ると感じます。

 

はい、こんな感じで自分の備忘録がてらにまとめたフーリエ変換でした。

最後まで閲覧して頂きましてありがとうございました!!

 

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